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小児在宅ケアガイドライン(初版)本文のみ掲載
小児在宅ケアガイドライン(初版) PDF ダウンロード 「親子の相互作用に着目した家族主体の小児在宅ケアガイドラインの
有用性の検証と活用」研究班
研究代表者:名古屋大学医学部保健学科 奈良間美保
「親子の相互作用に着目した家族主体の小児在宅ケアガイドラインの有用性の検証と活用」研究班
研究代表者 名古屋大学医学部保健学科
奈良間 美保
   名古屋大学大学院医学系研究科
松岡 真里
大須賀 美智
茂本 咲子
杉本 智美
小山内 文
本ガイドラインの無断転載および複写は禁止いたします。
本ガイドラインに関する質問等は、下記にお問い合わせください。
                     平成23年3月14日
〒461-8673
名古屋市東区大幸南1-1-20
研究代表者 奈良間 美保





Ⅰ.はじめに
 小児医療の進歩に伴って、重い健康問題をもつ子どもの命が救われるようになりました。急性期を過ぎても尚、医療的な技術や判断を要するケアを継続する子どもやその家族が、安楽で健やかな生活を送るためには、未だ医療や社会全体の準備は十分に整っているとは言えません。子どもと、親を中心とする家族(以下、家族とします)が共に過ごせるという基本的な権利さえも保障することは決して簡単なことではない現状にあります。
 現在、様々な病院では子どもの退院に向けた支援として、医療的ケアに焦点化した家族の支援が積極的に行なわれています。また、退院に際しては地域の社会資源サービスを調整して、事前に多職種カンファレンスを開催することもあります。しかし、家族が子どもの状態をどのように捉えて、またこれからの生活を子どもや家族がどのように送りたいと願っているのか、どのような家族でありたいと思っているのか、十分に注目されているでしょうか。看護師の側も、家族とのコミュニケーションに困難や戸惑いを感じ、ジレンマを抱えているかもしれません。また、家族の心情と病院の事情との板ばさみで苦悩する看護師も少なくありません。その様な時、援助の方向性はゆらぎがちで、自信を持って看護するのが難しい状況です。
 このような課題に対して、子どもや家族が医療者と有益なパートナーシップを築き、一緒に考え、検討して行けるための取り組みとして、小児在宅ケアガイドラインを作成しました。このガイドラインの特徴は以下の通りです。

  ◆子どもと家族の相互作用の視点から、養育を支えることに着目しています。
  ◆子どもと家族が主体となる医療者との協働の在り方を示しました。

 在宅ケアの始まりである入院中の早期から、在宅ケア移行期・継続期に至るまで、さらには何かの理由で新たに入院する時期など、あらゆる段階において、病院や地域で子どもと家族の支援に従事する看護師をはじめ、様々な職種・立場の方に、このガイドラインを活用いただきたく思います。
Ⅱ.ガイドラインの概要
 近年、医療が在宅中心に大きく転換する中で、医療的ケアを継続する子どもが、家族の一員として家庭で生活することが可能になってきました。子どもが家族との相互作用を繰り返す中で安全と安楽が保障されながら、それぞれの子どもの成長発達の過程を歩んで行けること、子ども、きょうだい、親、祖父母など、家族全体が心身ともに健やかでそれぞれに基本的な社会生活を営めることが在宅医療の前提となります。これらの理念が現実と乖離することなく子どもの在宅医療を実現するために、医療のあり方、および医療チームにおける看護の役割について、子どもと家族の相互作用と、子どもや家族と医療者の協働の視点から検討しました。看護師を始めとする様々な保健医療職に広く活用いただくことによって、子どもと家族がより健やかな生活がおくれることを目的に作成しました。
 尚、このガイドラインは、子どもの在宅ケアを検討し始めてから、在宅ケアに移行し、継続するまでの時期の子どもと家族の状況や医療者との協働に関する調査結果(資料2・3・4)に基づいて作成しました。看護師と家族それぞれの認識を明らかにすることで見出された支援の方向性について具体的に示します。
Ⅲ.小児在宅ケアの意義
 医療的ケアを継続する子どもが、安全と安楽が保障されながら、家族の一員として、親やきょうだいとの相互作用の繰り返しの中でケアが提供されて、成長発達の過程を歩んでいけることは、在宅医療であるからこそ実現できる生活の営みと言えます。また、家族にとっても子どもへの愛情を実感し、親として、きょうだいとしての意向を実現できる生活となります。このような子どもと家族にとっての基本的な権利を保障する生活の実現こそが在宅医療の意義であると考えます。
Ⅳ.小児在宅医療の特徴と課題
●入院中心の医療から、在宅中心の医療への流れ
 少子高齢化の進展、医療技術の進歩、国民の意識の変化等を背景として、平成15年に厚生労働省からより質の高い効率的な医療サービスを提供するための医療提供体制の改革のビジョン1)が打ち出されました。そこには、患者本位の医療、医療機関の機能分化と連携、地域医療の確保などの重要性が強調されています。その後の診療報酬改訂、在宅療養支援診療所の整備や訪問看護ステーションとの連携、病診連携の充実など、医療はこれまでの入院による医療から在宅医療を中心とする流れに急速に転換しています。
●子どもの健康問題の重度化と社会資源の不足
 小児医療では、医療依存度の高い子どもが増加する中で、NICUに長期的に入院している子どもの在宅移行支援などが社会的課題となっています。しかし、実際には平成21年の調査では、小児を在宅で診療した経験をもつ在宅療養支援診療所は全体の26%程度2)、平成19年の調査結果では、過去1年間に重症心身障害児・者を訪問した訪問看護ステーションはわずか36.9%に留まり3)、訪問看護師にとっては小児を対象とした看護の経験の少なさによる知識や技術についての不安を抱えていることなどが課題としてあげられます。また、重症児を受け入れる短期入所施設やレスパイトケア施設は極めて少ないなど、小児在宅医療を取りまく支援体制は未だ十分とは言えません。医療的ケアを継続しながら家庭で生活する子どもと家族が、安全で充実した日々を送るためには、活用可能な社会資源の乏しさが大きな課題となっています。
●退院支援から、生活の移行や発達の支援へ
 医療者にとっては、退院が一つの目標となりますが、家族にとっては、子どもと一緒に生きる家族のこれからの生活を現実的に受けとめること自体が大変なことであり、子どもを連れて帰ることを家族の選択肢の一つとして捉えて、家族の意向が生活として定着して行く過程を支えることに役割があります。
 病棟に勤務する看護師の立場では、自宅での生活や子どもの成長発達を見通した長期的な視野を持ちにくいことが考えられます。また、成長に伴って子どもの生活は変化することから、外来や訪問看護ステーション、通園施設や学校の看護師それぞれが継続的に関わることに難しさを感じていることなどが課題となります。在宅医療への移行を支えることから、子どもと家族の生活の移行やその中での発達を支えるより広い視点が求められます。
Ⅴ.小児在宅ケアの目指すところ
●一人の子どもとして、親として、家族としていられること
 子どもが生まれる前から抱いていた親やきょうだいとしての思い、子どもの健康問題が知らされる前から築いてきた子どもとの関係や家族の生活、治療経過の中で感じてきた【子どもの状態や治療・ケアについての捉え方】など、子どもや親(家族)がもつ見方や感じ方、気づきに敬意を払い見守り続けることが大切と思われます。
 調査では、「医療的ケアを行ったあと、子どもの状態は良くなる」といったケアによる効果は、退院前後ともにほとんどの母親が感じていました。一方、「子どもの状態は落ち着いている」「行なっている医療的ケアに満足している」などの肯定的な子どもの捉え方やケアへの自信をもつ家族は、退院後に増えていました。さらに、「子どものいいたいことがわかる」「子どもは私のことをわかっている」は親子の相互作用の基盤となる大切な感覚と思われ、退院後にこのような感覚をもつ家族が増えましたが、看護師は入院中に意識して関わっていない場合がありました。(資料4参照)
 家族の捉え方を共有しながら、一人の子どもとして、親として、家族としてどのようにありたいかという意向を共有し、そのための治療やケアの方法を共に考え、実現していくことを心掛けて行くことが大切と思われます。これらのプロセスを通じて、医師や看護師が医療として行ってきたケアが、親による養育や家族のコミュニケーションとしての意味をもち、【子どもや家族に合わせたケアの実施とそれによる子どもや家族の自信】につながります。
 調査では、家族が子どもとの相互作用を積み重ねる中で、「医療的ケアは、子どもの反応にあわせて声をかけながら行なう」「医療的ケアを、親自身や家族の生活に合わせたやり方で行なう」「子どもの日常の世話を、自信をもって行なう」など、子どものケアをより肯定的に捉えるようになりました。(資料4参照)
 【子どもの体調管理の判断】は、家庭で子どもが安全・安楽に過ごすために、また、家族が在宅ケアを継続して行くためにも欠かせない視点です。
 調査では、「子どもの体調が悪くなった時、受診した方がよいタイミングがわかる」「子どもの健康状態に合わせて、医療的ケアの方法を調整することができる」などの回答は、退院後に肯定的に変化しました。(資料4参照)
 【子どもへの愛着】を形成することは、子どもと親にとって大切な発達上の課題です。子どもへの愛着を育てながらもケアや家族の生活に自信がもてずに、在宅ケアへの移行をためらう親の心情を受けとめることが大切と言えます。また、病院で支援する多くの看護師は、医療的ケアを親が親自身の役割と思っているかを意識して関わっていることが見出されています。有効な社会資源に触れる機会が少ない中で、その必要性を実感したり活用の意向を表現したりする機会を十分にもてない家族に対して、医療的ケアを担うことに重点を置いた関わりよりも、その役割の大きさに配慮しながら親や家族にとって子どもの世話を行なう時の気持ちや意向、気づきを尊重した支援が大切と考えます。
 調査では、「子どもをかわいいと思う」「子どもとできるだけ長く一緒に過ごしたい」という親としての愛情は、体調や健康管理の難しさを感じながらも、ほとんどの親に育まれ、退院後も持続していました。(資料4参照)
   【 】は、資料2の養育の因子構造に基づいています。

●子どもと家族が主体となること
 子どもや家族が主体となるためには、人として大切にしていることや強みなどを含めて【親、家族、そして個人として尊重】されることが基盤となり、ケアに関連した【見方や判断を尊重した協働を保証】することへと広がりをもちます。また、医療者と情報を共有することは、生活全般や医療の中で起きていること、今ある事実を互いに確認することに加えて、それらの見方や感じ方、気づきなど、子どもや家族の感覚として表現する機会を保証することを意味します。従って、医療者から子どもや家族に情報を伝える場面においても一方向的なかかわりではなく、一貫して【協働に向けた双方向の情報共有】を行なう姿勢で関わることが大切だと言えます。
 そして、チームカンファレンスの機会なども活用して【子どもと親と医療者の話し合いの機会を保証】することで、【子どもと親を主体としたケア計画の実施】に一緒に取り組みます。子どもと家族には、治療や検査等、医療の選択に参加することや、医療者が検討したケアプランの検討に参加することに限らず、子どもとして、親として、家族として、何を大切にして、どのような生活を送ることを希望し、どのように自分でありたいかを描きながら、それに沿った方向で子どもや家族が医療者と共に治療やケアプランを一緒に考えて行くことを保証することが求められます。
 さらに、組織的なアプローチとして、1日24時間いつでも入院している子どもに会えるような、家族と一緒に【常にチームとして取り組む姿勢】をもつこと、自宅に帰った後の連絡先を伝えたり、医療者とのすれ違いが起きたときの相談窓口を設けたりするなど、【家族との率直なコミュニケーションと情報窓口の保証】に努めます。このような支援こそが、医療の中にあっても子どもらしく、親として、家族としていられることを支えます。
   【 】は、資料2の協働の因子構造に基づいています。

Ⅵ.医療チームにおける看護の役割
1)子どもや家族との相互作用を通した支援
●子どもや家族と看護師との相互作用
 調査ではほとんどの家族が、医療者とともに観察すること、判断を共有すること、子どもに関する家族の見方やケアの方法が尊重されることを望んでいました。さまざまな職種が存在する医療チームの中で、特に看護師は、子どもの日常のケア場面において、子どもや家族が感じたり、捉えている病状や治療、ケアの効果について、子どもや家族自身にたずねたり、時に一緒に観察することで、子どもや家族の見方、とらえ方を共有できる立場にいます。看護師は、子どもや家族が、感じていること、見方、判断を語り、伝えることを通して、子どもや家族自身の気づきとなり、さらには、大切にしていることにも気づいていけるように、寄り添い、見守ることが求められます。これは、看護師からの一方向的な情報の提供や問いかけではなく、子どもや家族のそのときの反応、見方、判断を共有する、子どもや家族と看護師との相互作用から生じる支援と考えます。
●子どもと家族の希望や意向に基づく調整
 医療チーム内の異なる専門職からの支援が、一つの方向性になるように調整されていたと感じている家族は6割程度であり、ほとんどの家族がそのような調整を希望していました。看護師には、医療チーム内での調整役が求められますが、子どもや家族との相互作用を通して行われる看護師の“調整”とはどういうことをさすのでしょうか。もちろん、関わる専門職間での役割や、必要なケア、社会資源の調整が含まれます。しかし、看護師には、子どもや家族が病状や治療をどのように捉えて、どのような気持ちでいるのか、さらには人として、親として、家族として、子育てや生活全体の中で何を大切にしているのか、そのためにどのような治療やケア、社会資源を希望しているかなど、子どもや家族の意向が遂げられるように支える役割があり、そのため、医療チーム内で方向性の調整を担うことがより重要となります。これは、子どもや家族の気持ちや希望、意向を共有しながら、治療やケアの計画を一緒に検討していくことを通して、実現できると考えます。そして、看護師だけでなく、子どもや家族が、自身の希望や意向をもとにさまざまな専門職とも、一緒に治療やケア、社会資源の活用を計画する体験を通して、退院後の生活の中でも、専門職との相互作用を感じながら、子どもや家族なりの生活やあり方を見いだしていけるように、子どもや家族と専門職の間を調整することが含まれると考えます。
●子どもや家族と看護師との協働のかたち:“参加”を越えて“一緒”に考える
 調査では、ほとんどの家族が、希望や関心が尊重され、子どもの生活やケアについて一緒に考え、計画することを希望している反面、実際に一緒に考え、計画を立てている看護師の割合は7〜8割程度、という結果が見いだされました。また、家族が、一緒に考え、計画を立てることを望んでいることに対し、看護師は、ケアや計画に子どもや家族が参加するという視点をもっていることも示されました。“参加”という言葉からは、時に、医療者主体のケアや計画の中に、子どもや家族が加わる、というイメージをもち、子どもや家族が主体的にケアや計画に取り組むというニュアンスとは異なるように感じられます。ケア計画への“参加”にとどまらず、常に子どもや家族の希望や意向を確認しながら、子どもと家族と“一緒”に取り組むということが、先に述べた、子どもと家族と看護師との相互作用につながる重要な視点ではないかと考えます。

2)退院に向けた支援から、生活の移行、発達の支援へ
●子どもと家族の生活の拡がりを視野に入れた情報の共有
 各医療機関のNICUや小児病棟では、退院に向けた支援として家族への情報提供を意図したパンフレットの作成や、退院後の相談窓口の紹介が積極的に行われています。調査でも、9割以上の看護師が自宅に帰った後の連絡先を知らせたり、パンフレットを用いてわかりやすく情報を伝えていました。しかし、子どもの治療やケアを選ぶときに、いつも十分な情報が提供されている、書面やパンフレットなどわかりやすい方法で提供されていると感じていた家族は7割程度で、ほとんどの家族が、より情報を求めていることが示されました。そして、重症な子どもをもつ家族だけでなく、重症度が比較的低い子どもの家族も、生活の場の拡大に向けた支援や情報、社会資源を求めていました。退院に焦点をあてる情報ではなく、子どもや家族がどのような生活を過ごしたいと考えているかという意向に着目し、子どもと家族の生活の場が広がることを視野に入れた情報の提供が求められます。
●子どもと家族とともにあること
 時に、医療者主導で、家族の気持ちが置き去りになったまま退院支援が進められることがあるかもしません。そのような場合には、将来が見えない不安や「わかってもらえない」という気持ちから頑なに心を閉ざしてしまう家族がいるかもしれません。今回の調査から、家族は、子どもをかわいいと思い、そして、できるだけ長く過ごしたいと感じながらも、自身が行う医療的ケアや育児、日常の世話に自信をもちづらいことが示されました。看護師は、子どもを家に連れて帰ることに対する家族の複雑な思いに寄り添い、家族であるからこそ抱く、その気持ちそのものを尊重することが大切な支援ではないかと考えます。
 また、実際に退院し、自宅で生活している家族は、退院前よりも、医療的ケアを子どもだけでなく、親や家族の生活に合わせた方法で行うようになり、落ち着いていて穏やかでいい表情と子どもの状態を捉えるようになっていました。そして、退院後の生活の中でも変わらず、子どもへの愛情を育みながら、子どもへの日常の世話や医療的ケアに自信を感じるようになることがわかりました。子どもや家族の希望や意向、家族としてのあり方に関する家族なりの見方を、生活の変化や成長発達の視点から子どもや家族とともに捉え、その過程を子どもや家族とともに感じ、共有しながら、子どもや家族とともにあることが医療チームにおける看護の大きな役割であると考えます。病院から自宅へ、そして、社会へと生活の場が広がっていく過程において、退院前の病棟や外来、さらには訪問など、それぞれ異なる場にいる看護師が、子どもや家族との相互作用を通して、子どもや家族の希望や意向を共有し、家族の意向が定着していくことを支え続けることは、生活を支える看護本来の役割だと考えます。
Ⅶ.ガイドラインによって期待されること
 子どもの在宅ケアを検討し始めてから、その準備や移行を経て、継続するまでの過程でガイドラインを活用することによって、以下のことが期待されます。
 子どもと家族は、医療的ケアや育児上の判断、子どもの捉え方を医療者と共有することによって、その方がもつセルフケアの力を発揮しやすくなり、健康状態の維持・改善とともに子どもと家族の自信や愛着形成、満足感につながることが期待されます。これらは子どもと家族が社会で生きていく基盤になると思われます。また、子どもと家族の相互作用は、より自分らしく、親として、きょうだいとして、家族としていられることを支えて、その効果は循環的に持続することが期待されます。
 また、看護師にとっても、子どもや家族との相互作用を繰り返すことによって、感受性やコミュニケーションなどの実践能力が養われ、子どもや家族と喜びを共有することによって看護師自身も満足感が得られやすく、さらなるケアの質向上が期待されます。
 さらに、施設および社会にとっても、子どもと家族の意向に沿い、より納得できる形で在宅への移行が実現した場合は、NICUまたは小児病棟の稼動率の向上や限られた資源の有効活用といった経済的効果も期待されます。
 このように、ガイドラインは単に行動レベルの達成を目指すものでなく、医療者に求められる姿勢や理念を示しています。また、様々な立場の方に活用いただくことで、社会の在り方を考える機会になることも期待されます。
引用文献
1)厚生労働(2003): 医療提供体制の改革のビジョン―「医療提供体制の改革に関する検討チーム」まとめ―,
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/04/h0430-3a.html
2)前田浩利:長期NICU入院児の在宅医療移行における問題点とその解決(平成20年度~22年度),厚生労働科学研究補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「重症新生児に対する療養・養育環境の拡充に関する総合研究」平成20~22年度総括,2011
3)社団法人 全国訪問看護事業協会編:平成19年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)重症心身障害児・者への訪問看護ステーション業務基準を活用した発達支援モデル事業報告書,11-21, 2008
ガイドラインの活用に関するQ&A
Q1:ガイドラインとは何ですか?マニュアルとの違いは?
 A:このガイドラインは、子どもと家族に対する支援の方向性を示すものです。マニュアルのように、具体的な行動を示すものではなく、何を目指して支援を行うのか、また何に基づき、どのような方向性で支援を行うのかを示したものです。 Q2:どのような職種の人が活用することを目的に作られたものですか?
 A:長期的に医療的ケアを常時必要とする子どもとその家族への支援にあたる看護師を中心に、あらゆる専門職者を対象として作成されています。
Q3:このガイドラインは、どのような病院、施設、訪問看護ステーションでも使えますか?
 A:どのような施設でも使うことが出来ます。具体的な支援の内容は、各施設によって異なりますが、子どもと家族を取り巻く専門職の中の一人として、子どもと家族をどのような視点で支えていけばよいか、このガイドラインを参考にしてみて下さい。
Q4:どのような子どもと家族の支援について書かれたものですか?
 A:長期的に医療的ケアを常時必要とする子どもとその家族へのケアを中心に作られたものです。具体的には、以下のような例が挙げられます。
・NICUに入院しているが、退院後も日常的に医療的ケアを行うことが必要と思われる場合
・自宅で生活していたが、大きな身体状況の変化に伴い、今後は医療的ケアを継続して実施することが必要な場合
・もともと自宅で生活していたが、新たなケアが必要となったり、医療的ケアの内容が変更になったりする場合

Q5:このガイドラインはどのような時期に使えばよいですか?
 A:子どもの退院後の生活についての検討は、子どもが入院したときから始まります。そして、退院がゴールではなく、子どもと家族の生活の新たな始まりであり、在宅生活移行後も、子どもと家族の発達は続いていきます。このガイドラインはどの時期にも活用可能であり、具体的には、以下の時期すべてにわたります。

・入院したとき
・退院後の生活について考えるとき
・退院の予定が具体的になり、退院に向けて準備をしているとき
・退院し、その後外来受診したときや訪問したとき
・退院後、(体調不良、検査目的、レスパイトなど)再入院したとき

Q6:このガイドラインは、どのような場合に使うと有効ですか?
 A:子どもと家族の今後の生活について検討するときに、気持ちが揺らいだり、意見の相違があったり、医療者が家族とうまくコミュニケーションがとれないときもあります。このようなとき、ガイドラインを用いて問題を捉えなおしてみてください。例として、以下のような場合が挙げられます。
・退院に向けての準備をおこなっているが、なかなか予定通りに進まない
・今後の生活についての心配・不安が強い
・退院を目前に、いざとなると躊躇してしまう
・子どもの状態について認識のずれがある、意見が分かれている
・これから多職種、他施設を含むカンファレンスを行う
・専門職種間(看護師‐看護師、看護師‐医師等多職種、病棟‐外来、在宅支援担当、病院‐地域、医療職‐保育・教育・福祉職など)で認識のずれがある
・活用できる地域資源が少ない

Q7:このガイドラインは、どのように使ったらよいですか?また、既にあるマニュアルとの併用は可能ですか?
 A:既にあるマニュアルとの併用は可能です。このガイドラインを参考に、子どもと家族の現状を捉えなおしてみてください。子どもと家族の相互作用について、さらに相互作用を支える環境因子について情報を整理してみましょう。
それを踏まえ、支援の方向性とその内容について評価してみましょう。
さらにPFCCの理念(資料⑤)に基づいて、支援する側のあり方についても評価してみましょう。
→資料-① 子どもと家族と医療者との協働のあり方
子どもと家族の現状を捉え、支援の方向性を確認した上で、具体的な支援の内容についてはマニュアルを活用してみてください。また、マニュアルを見直す際の視点としても、ガイドラインは活用できると思われます。

Q8:行っている支援について評価したいのですが、ガイドラインにのっている項目を満たしていれば、支援は十分に行うことができていると考えていいでしょうか?
 A:このガイドラインは、医療者としての姿勢や支援の方向性を確認するためのものです。項目が満たされれば、支援が十分にできているというわけではありません。あくまで支援する側のあり方を示したものですので、項目ごとに、対象となる子どもと家族にとってはどのような意味がある(あった)のか、実際の子どもと家族の様子を具体的に振り返り、あわせて評価してみてください。
資料
資料1:子どもと家族と医療者との協働のあり方
資料2・3・4:家族および看護師を対象とした調査結果
医療的ケアを継続しながら自宅に帰った子どもの家族と、そのような子どもと家族に関わった看護師を対象に、子どもと家族を主体とした医療者との協働、養育および家族機能・社会資源に対する認識について調査しました。
 資料2-①:協働についての看護師の認識の因子分析
    -②:養育についての看護師の認識の因子分析
 資料3-①:協働についての家族の認識(グラフ)
    -②:協働についての家族の認識(表)
    -③:協働についての看護師の認識(グラフ)
    -④:協働についての看護師の認識(表)
 資料4-①:養育についての家族の認識(グラフ)
    -②:家族機能・社会資源についての家族の認識(グラフ)
    -③:養育についての家族の認識(表)
    -④:養育についての看護師の認識(グラフ)
    -⑤:家族機能・社会資源についての看護師の認識(グラフ)
    -⑥:養育についての看護師の認識(表)
資料5:Patient & Family-Centered Care